戴冠式前夜

頂きを目指す彼等の背中

映画グラスホッパーの感想


 漸くグラスホッパーを見に行けたのでその感想を。詳しくはネタバレを含むので下に書くとして、取り敢えず山田くんの蝉かっこよすぎた…!
 原作既読、ついでにコミカライズされた分も総て読んでいたのですがコミカライズの際に固定された“蝉”像とはまた違った“山田くんの蝉”が出来上がっていました。アップの顔も綺麗だし血飛沫かかっても綺麗。後は細かい演技や声の緩急もすごく良かったです!アクションは文句なし、圧巻でした!ナイフさばきも早送りで見ているようで感嘆の一言です。
 岩西との関係性はどちらかというとコミカライズに近いような。時々見せる可愛さもずるい。私は特にシジミを机に置いてガン見する蝉の顔が可愛すぎてびっくりしました!是非ご注目下さい~お酒の瓶蹴り飛ばすとこも死ぬほどかっこよくて息を呑みます。
 他のキャスト陣もす味があって、音楽もかっこいい。噂のセットも完全に本物でした…!美術さんすごい!

 取り敢えず映画をみて岩西と蝉の関係が気になった方は是非コミカライズされたこの二人のスピンオフ作品「waltz」を読んで頂きたい。蝉が死ぬほど可愛いです。可愛さに殺されるとはまさにこの事。
 既に完結済みですし映画に合わせて新装版もでております。

 更に伊坂幸太郎の殺し屋シリーズに興味を持たれたならば原作の「魔王」→「グラスホッパー」→「首折り男のための協奏曲」→「マリアビートル」を是非読んで頂きたいです。
 「モダンタイムス」は殺し屋シリーズではないので(「魔王」もですがこちらは基盤と言うことで含みます)省くとして、前編通してキャラクターが出てくるというわけではありませんが、名前や通り名が出てきたり、ワードだけ出てくるということがよくあるのでそれに気付いた時に懐かしい気持ちと繋がった爽快をえられますので余裕がある方にはオススメです。
 斗真くんと山田くんが「マリアビートルもやりたいね」と何かで言っていたのですが私もこの二人なら「マリアビートル」を演じて頂いた方が良かったんじゃ…なんて思ってしまいました。なんせ七尾はとても斗真くんに似合いそうだし、王子役の山田くんも死ぬほどみたい…!王子様みたいな外見して性格きつくてゲスい山田くんっていうのも新境地だと思うんですよね!でもグラスホッパーやっちゃったし…まあ、無粋な事を言うのは止めましょう。

 とにもかくにも山田くんの蝉は最高だった。その一言に尽きます。そして山田くんとしてこの“蝉”と言う役を演じられた事はすごく大きいことだったんでは、と思います。
 此処からはJUMPファンの人間の意見ですが、アイドル、ましてやジャニーズとして出演するドラマや映画となるとやはり定石は「恋愛もの」になってしまうイメージです。しかし幸か不幸か(私としては良いことだと思いますが)山田くんが今まで演じてきた役は一種のカリスマ性をもった独特の世界観のキャラクターが多く「探偵学園Q」のリュウや、「左目探偵eye」の愛之助、「金田一少年の事件簿」の金田一など“探偵”と言うその物語の軸を何度も演じてきた山田くん。その彼が今回は正反対の、いわば裁く裁かれるの関係では相対する立場の殺し屋を演じると言うことだけでもかなり衝撃だったのでは無いでしょうか。
 探偵役が続き恋愛ものを演じる事が極端に少ないだけでもジャニーズのアイドル班としては中々無いことだと思います。ましてや今売り出し中の(ジャニーズ事務所全体で見れば)若手のキラキラアイドルグループのエース。顔が作り物のように綺麗でどんな時でも美しい。そんな逸材、普通に考えれば恋愛ものの引っ張りだこじゃないんでしょうか…。
 それでも私は山田くんが演じてきた役、関わってきた作品がすごく好きです。「暗殺教室」然り「理想の息子」然り、山田くんだからこそ出来たモノだと思うからです。
 顔が本当に綺麗で二次元顔な山田くんだからこそ、「暗殺教室」と言うマンガの実写化でも違和感なく演じれたのだと私は思います。原作ファンの私が始め知ったとき「まじか…」とマイナスな感想を抱いたことを此所で明かします。そもそもジャンプ作品と言えば少年マンガの王道。キャラクターのビジュアルも、三次元からは程遠くその中でもアニメ化するほどの人気作品。それの実写化、なんて批判がわくに決まってる…とその時の私は思っていました。それでも映画を見に行ったのは「JUMPが好きだから」です。正直あまり期待をしていませんでした。“渚くん”は外見に特徴があるキャラクターだったので余計。しかしそんな私も映画が始まればマイナス意見なんて吹き飛んで、ただただ面白い!と感動した事を覚えています。
 脚本も良かったと思います。それでも私が不安を抱いていた“渚くんを演じる山田くん”。そりゃ見た目は仕方ないけれど、中身は完璧に“暗殺教室の渚くん”でした。弱い訳じゃないけれど優しくて一番戦闘力がなかったはずの彼が強さを見せるところ。視線一つ、喋り方、声のトーン。そのどれをとっても山田くんは完璧に“渚くん”を演じてくれていました。
 話が大幅にそれましたが、それくらい私の中で“役者:山田涼介”の評価はすごく高いものになっていて、そんな山田くんに来た「グラスホッパー」と言う人気作品のその中でも人気の高い“蝉”と言う役。その発表を聞いた時、私は素直に「やったー!」と思えました。山田くんなら完璧に演じてくれると言う信頼があったからです。
 「グラスホッパー」に関して言えば伊坂幸太郎さんの殺し屋シリーズが大好きなので原作ファンであるとともに、「魔王」と言う作品がコミカライズされておりそのコミックのファンでもありました。コミックのストーリーは「魔王JUVENILE REMIX」と言うタイトル通り、「グラスホッパー」ではなく「魔王」がメインなのですがそこに“蝉”や“岩西”と言う共通キャラクターが登場します。先にそちらを読んでいた私としてはやはりキャラクター像がコミカライズされてビジュアルや動く姿を見ている身としては出来上がったイメージがあったのですが、“山田くんの蝉”がどうなるか、という不安はありませんでした。「暗殺教室」の“渚くん”同様また完璧な“蝉”を見せてくれると思っていました。
 そして実際映画を見て、「ああ、やっぱり山田くんはすごい」とただただ感動しました。コンサートや雑誌で見せる姿は勿論今までのドラマや映画で見せた優しいだとか、可愛いだとか、コミカルな姿は完全に掻き消え「殺し屋」として冷徹で狂っていて、それでもどこか人間臭い。“蝉”の持つ強さや、残酷さ、弱さ、優しさ、そんな理想の“蝉”を山田くんは演じてくれていました。アクションもナイフさばきも目茶苦茶かっこいいです。でもそれ以上に表情や喋り方、仕草、立ち居振舞い。それが完全に“蝉”だった。私が想像していた、こうであって欲しいと思う“蝉”そのものだった。それがJUMPファンとしてというよりは原作ファンとして、心から嬉しかったんです。
 “蝉と岩西の関係”や“蝉のバックグラウンド・内面”の部分はやはり映画用に少し変わっていました。原作ファンとして変化は往々にして厭うべき要素ですが、それでも私は最高だった、と言います。
 血塗れになって、人として逸脱した言葉を、考えを口にしながらも、人として生きていた蝉の美しくも壮絶な姿を、“アイドル”という言葉を忘れてしまうくらいに演じきってくれた山田くんには心からの賛辞と感謝を送りたいです。アイドルらしい恋愛もののキャラクターも勿論良いと思うんですが、折角演じるのであれば見るものがあっと驚くような、今までのイメージを壊すような、そんな役を演じてくれる人であって欲しいなあと染々思いました。
 主役じゃなくてもいいと私は思うんです。ただ素敵な役を演じて欲しい。アイドルだからこそできる役も、アイドルだからこそあり得ないと思われる役も、どんな役でも山田くんには挑戦して欲しい。私は“役者:山田涼介”がとても好きなんだと今回で再確認しました。勿論“Hey!Say!JUMPの絶対エース山田涼介”が一番好きですが(笑)
 私は髙木くんファンなので山田くんには詳しくないですが、それでも思ったことを書かせて頂きました。山田くんファンの方からしたら間違えているかもしれませんし、共感出来ないかもしれません。ですがこれも一視聴者の意見として流して頂けたらと思います。私は何度でも「山田くんこんな役やるの?」なんて思えるようなキャラクターを演じて欲しいです。「これどうなるの…」なんて不安やマイナス意見を吹き飛ばして欲しいと期待しています。
 来年の「暗殺教室 卒業編」を心から楽しみにしております。

















 さて散々山田くんをべた褒めしまくったわけですが、此処からはネタバレを存分に含み且つ原作を読んでいた伊坂幸太郎の俄ファンとしての映画全体の感想です。最初に言っておきますが決して肯定的ではないのでご注意ください。
 取り敢えず注意書はしましたから!後で怒らないで下さいね!(小心者)





 まず始めに、映画を見た感想としては星5つ中星3つです。主に蝉や他のキャストさん含む、キャストさんの素晴らしさが大きいところを占める評価です。
 映画を見る前に原作を読み返しておけば良かったのですが何分面倒くさがりな性分故に何年前かに読んだ記憶のまま挑んだわけですが初っぱなから「ん…?」なんて違和感を抱きそれが結局最後まで残る。前情報として伊坂さんが「この監督なら」と言うことで実写化に至ったと聞いていたので何だかこれは…と言う感想でした。よく言えばおしい、悪く言えば拍子抜け。前評判や予告映像が良かったばっかりにかなり物足りなさを感じていました。
 そもそもが視点がコロコロ変わるのでテンポ感が悪い。原作を読んでいる時は私は感じなかったのですが、他の方からそこがデメリットと聞き及んではいたのでそれが裏目にでた印章でした。後は圧倒的に省かれていることが多すぎる!そりゃ皆さん終わった時に「え?」ともなるだろうし「難しくてよくわからなかった…?」なんて感じると思います。でもそれ、見てる側が悪いんじゃなくて脚本が悪い。
 流石にクレジットで“押し屋”ではなく“槿”と出てきた時には笑いました。その下り一回もなかったぞ!と。確かに表札には“槿”とありましたが、私が期待した「お名前は~」の下りは無かった!あそこ好きなのに!チラシやらなんやらでは“槿”と出ていたようですが映像中ではずっと“押し屋”と呼ばれていたのに…と。
 後は“蝉”と“鯨”がまさかの“槿”とも“鈴木”とも交差しないところ。キーワードとしてはあるんでしょうが「え、その四人が交差し合うってのが醍醐味じゃないの?」と。
 後はまあ“劇団”が明かされなかったことですね。“スズメバチ”はストーリー上「ボスが死ぬのがそんなあっさりでいいんか…しかも誰だそれ」となっておさまりがつかないから出さなかったと思えますが、“劇団”に関してはかなりピックアップされてたのに?と驚きました。そもそも事件の発端やらなんやらが違うからかもですが最後の最後に「ある組織ってなんや…目的…?」と言う遺恨を残して終わるあの結末はちょっとどうかと…(小声)グラスホッパーと言うタイトルにまつわる槿の「トノサマバッタは~」の話も鈴木の学生時代の話がなかったら分かりにくいし、あの回想と、“劇団”について話してくれた比与子さんの尋問タイムは残して欲しかったな。
 後は“劇団”のあの二人と鈴木の最後のシーンが大好きなだけにかなりショックでした。と言うか“劇団”が好きだからこそショックでした!!もっとそこ掘り下げて良かったんじゃないかな!?
 取り乱しましたが映画全体の感想はこんな感じ。何度も言いますが蝉は最高。キャスティングも最高。脚本がおしい。原作読んでなかったら物足りなさは感じないかもしれませんが、すっきりとしないまま謎が残る終わり方なんじゃないかな、と。四つの視点が交わってすれ違って、また離れていくのが「グラスホッパー」。なら一ヶ所で四つの視点が一つになっていく「マリアビートル」の方が話的に良かったんじゃ…と思いつつこっちは場所が場所だけに映像映えしないんでしょうかね。
 蝉のアクションをみたい!美術のすごさを感じたい!という方には映画館で見る事をおすすめしますが面白さを求めるなら一回で良いかな、という感じでした。途中に入る音楽はすっごいかっこいいのでそこも見所かもしれません。後は蝉の部屋のなかに「抑圧」のポスターがあったことと、多分登場シーンの的がデコーズだったことは「おっ」となりました。あれデコーズだったよね?違うかな…?
 後これは“蝉”が好きなのでちょっと残念だなあと思ったところは「殺し屋としての蝉」の特徴が無かったこと。蝉は猫や犬には優しいけど人間には冷たい。それこそ男も女もこどもも老人も、誰を殺すにしても「一緒だろ」と言える彼の精神は描かれてなくて、そこはNGだったのかなあと思うと勿体ないやら仕方ないのか、と。
 うーんやっぱり難しいですよね、実写化。でもこれ本当に一意見なので違う感想の方もたくさんいらっしゃると思いますし是非一度ご自分で観ていただくのが最良です。総評としておしいストーリー構成と最高にかっこいい音楽と細かく素晴らしい美術満載の舞台に配役、演技ともに最高な役者が揃ったあと一歩間溢れる出来と言うことで感想終わり。蝉かっこよかったです!(数回目)